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京都丹後地方上世屋地区に伝承される「藤織り」(訪問調査報告)

フェア・プラスでは、フィリピンで取り組みを行っているアバカ・マクラメ編みと、同じような背景を持つ日本の伝統工芸文化の調査を行っています。日本の伝統工芸を知ることにより、今後のフィリピン・マリナオ村サンラモン地区での活動を進めるための示唆を得ることができるのではと考えました。

 

20188月、京都丹後地方上世屋地区に伝承される「藤織り」について、お話をお聞きするため、藤織り伝承交流館を訪問し、藤織り保存会会長井之本泰さんからお話をお聞きしてきました。


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【藤織り伝承交流館】

 

上世屋は天橋立から車で一時間ほどの所ですが、海岸線から山に入り登っていく標高約400メートルの土地で、猛暑の時期でも心地より涼しい風が吹いていました。

上世屋は山の斜面に美しい棚田が広がっており、日本の里100選にも選ばれています。


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【上世屋の棚田】

 

しかし、冬は厳しく今でも2、3メートルの積雪があるそうです。道路の除雪が難しかった昔は、村で暮らす人たちがお互いに助け合って、家の中に籠って暮らしていたそうです。

村で暮らす人たちは昭和38年の豪雪が契機となって過疎化が進み、48軒あった民家は12軒(24人)まで減少し、小学校の分校も昭和51年に閉校となりました。

今回訪問した藤織り伝承交流館は、この閉校した分校の建物を生かして開かれていました。

 

「藤織り」に使用される藤の木のつるは、上世屋の人たちの暮らしに深く関わっています。村の人たち焼き畑農業を行い、山への依存が高かった。山に多く生えている広葉樹の木から薪を取って暮らしていましたが、薪にする木に巻き付く藤のつるを切り出して、藤織りを織っていました。

村の周辺に自生するアバカの木から繊維を採って「アバカ・マクラメ編み」を編んでいたマリナオ村サンラモン集落の人たちと同じような背景がありました。

藤のつるは、水分を多く含んで繊維を扱き取りやすい5月~7月に切り出し、いくつかの工程を経て繊維を作り、雪に閉ざされる冬に機織りがされていました。


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【藤の木のつる】

 

山への依存度が下がり山に人が入らなくなってくると山は荒廃し、藤織りに使える良質の藤のつるも手に入らくなってきたそうです。また、江戸中期になると肌触りがよく温かい綿花が庶民の間にも普及したことから、それまで農村で衣類や道具に一般的に使われていた「藤布」が使われなくなってことが、「藤織り」の衰退の大きな一因となっています。

現在は村の過疎化と相まって、伝統の「藤織り」が、ほとんど途絶えてしまったわけです。

このような状況は、日本各地の多くの土地で起き、伝統が失われていっています。


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ではなぜ「藤織り」が、この上世屋で発展したのでしょうか?その理由は雪深い土地と藤の木が多く自生していたからだけではありませんでした。井之本さんにお聞きしたところ、江戸中期に各地で綿花の栽培がおこなわれるようになりましたが、雪深い上世屋では綿花の栽培がうまくいきませんでした。一方、丹後地方は「ちりめん」の産地として有名で、農村の若い女性はちりめん問屋に奉公に出て、機織りをしていたそうです。そこで機織りの技術を身に付けて村に帰えった女性たちはが、冬場「藤織り」を行っていたそうです。冬の間に織った藤織りは、春に開かれる宮津のお祭りに奉納されていたそうです。

 

それでは、藤織りはどのような工程を経て織られているのでしょうか?以下のその工程をご説明します。

5 藤織りの工程

1.フジキリ(藤伐り)

森から藤の木を伐り出してくる。

2.フジヘギ(藤剥ぎ)
藤の木を木槌で叩いて表皮を剥ぎ、繊維に用いる中皮を採り出す。 

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【藤の木の中皮】

 

3.アクダキ(灰汁炊き)

中皮を水に浸し柔らかくし、木灰汁で炊く。

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【灰汁炊きの窯】

 

4.フジコキ(藤こき)

炊きあがった中皮を皮で洗い、コウバシというV字型の金属で扱いて不純物を取り除く。繊維部分のみが残る。


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【中皮を扱くコウバシ】

 

5.ノシイレ(のし入れ)

米ぬかを溶かした湯に、藤の繊維を浸し、滑らかにする。繊維がトリートメント効果によりさばきやすくなる。


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【ノシイレを行った藤の繊維】

 

 6.フジウミ(藤績み)

  繊維を結び目を作ることなく、撚り合わせて績いでいく。(綿花から繊維を引き出していくことを‘’紡ぐ‘’と書くが、藤などの繊維に撚りをかけていくことを“績み”と書く。ここから紡績という言葉が生まれました。)


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【撚り合わされた藤の繊維】

 

7.ヨリカケ(撚り掛け)

績まれた糸を湯に浸して柔らかくし、糸車で全体に撚りを掛けていく。

8.ワクドリ(枠取り)

撚られて糸車に巻かれた糸を木枠に巻き取る。


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【ワクドリされた繊維】

 

1.ヘバタ(整経)

まかれた糸枠12個をもちいて整経台によって縦糸を決められた本数に整える。

2.ハタニオワセル(機上げ)

荒筬を用いてタテ糸を巻いた後、綜絖と筬へ通し、織り付け布に結ぶ。

3.ハタオリ(機織り)

機織り機で織り上げる。1反織るのに3~4日かかる。

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【機織り機】

 

これらの作業は非常に手間のかかるもので、1.藤の枝の切り出しから、7.撚り掛けまで3か月を要し、糸づくりに1か月を要する。まさに雪に閉ざされる上世屋の農閑期の根気のいる作業だったようです。

 

藤織りの伝統を受け継ぐおばあさん光野ためさん、小川ツヤさんのお二人がいらしたそうですが、数年前に亡くなられました。今回お話をお聞きした藤織り保存会会長の井之本泰さん方有志のみなさんは、おばあさん二人から伝統の技を学び、保存会を立ち上げられました。

保存会では、1989年より毎年藤織りの全工程を学ぶ、12日x7回のかなり専門的な講座を開催しています。藤織り(またはそれに類似した織物)は元々日本各地で織られていましたが、いずれの地方でも伝統が途絶えてしまいました。地元の藤織り(または同種の伝統の織物)を復活させたいと願い人は多く、その人たちが上世屋に毎年学びに来ているとのこと。

講習会を始めて
29年、上世屋学んだ多くの方たちが、島根県、岐阜県、和歌山県など、各地の方たちが講習を受けられて、伝統の復活に取り組んでいることを最後にお聞きしました。


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【井之本さんが織られた農作業の服】

 

井之本さん方藤織り保存会のみなさんの取り組みに感銘を受けるとともに、私たちの「アバカ・マクラメ編み」の今後の取り組みに多くの示唆を頂き、勇気づけられる思いでした。

いつか、井之本さん方藤織り保存会とご一緒に何かできたらと願って岐路につきました。

 

以上

Comment

MaryKruger | 評価 4 | 2018年11月22日 06:59
「ディープラーニング(深層学習)」 は、この「特徴量」を自分で見つけ出すことができる技術で、これまで解決するのとのできなかった最大の壁を崩すことができる可能性を秘めた技術なのです。 <a href=https://jamedbook.com/2772-2/>https://jamedbook.com/2772-2/</a> したがって、合併症発生のリスクは分娩が終了するまで続くと考えられ、この点から28週で服用を中止することは理にかなっていません。

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