2015年11月7日 第5回ツキイチカフェをNPO法人アクセス事務局長 野田 沙良さんをゲストに迎えて「私を豊かにする、『国境を越えた家族』」をテーマに開催致しました。
以下、カフェでのお話を纏めましたのでご覧ください。野田さんのお話は現場で長く活動してこられた方でないと語れない、国際支援NGOの活動に興味を持つ人たちにとって、非常に学びの多いお話でした。
テーマ:「私を豊かにする、『国境を越えた家族』」
学生時代(生きる目的としての国際協力)
生きることがしんどかった高校時代に、ビルマを舞台にした国際ボランティアを描いた映画と巡り会って、自分でも社会の役に立てるのではと生きる目的を見出した。大学に入学して最初の2年間はミュージシャンの追っかけなど遊びほうけたが、ある時国際協力に関心を持った自分を思い出し、3年生の後半から国際協力に関する情報を集めたメルマガでの情報発信の活動を行うように。
4年生の夏には、NPO法人アクセスのスタディツアーに参加して、マニラの都市スラムに衝撃を受ける。さらに、スラムで笑顔で暮らしている子供たちに、自分が如何に現状を理解していないかを認識させられ、再びショックを受ける。こうした体験が原点となり、「国際協力を仕事にしたい」と考えるようになった。
マニラでのインターン
大学4年時のNPO法人アクセスでのボランティアや事務局でのアルバイトを経て、一端は企業に就職。その後、退職してマニラに移住し、アクセス・フィリピンで2年間のインターン生活を送った。
ゴミ捨て場に暮らす友人ジェーンは、子供に食事をあげられず、ごみの中から食べ物を拾ってあげる時が最もつらいと話してくれた。また、スラム街の人たちが火災で焼け出されまともな食事が食べられない時、自分が普通の食事を取ることに罪悪感を覚えた。しかし当時は、困っている人たちの気持ちを理解したくても、なかなか我が事のようには実感できない自分にもどかしさを感じていた。
そんな時、当時のアクセス・フィリピンの事務局長に、「サヨは自分だけのためではなく、フィリピンの人のために活動してくれている。そのことだけで十分だよ。」と言ってもらったことで救われた。貧困を味わったことのない自分には理解できないことはある。それでも、活動から逃げないことが大切だということに気づかされた。
NPO法人アクセスの活動
フィリピンでは、10人に3人が小学校を卒業できないと言われている。そんな中、アクセスでは奨学金制度を実施して、貧しい子供たちを小学校へ行けるよう支援している。そのためサポーター制度をとり、「15,000円で、1人の子供の就学を支援する」という形を取っている。学用品などの提供のほか、補習事業や給食の提供も行っている。
現在のフィリピンでは、少なくとも高校卒くらいの学歴がないと就職が難しい。「奨学金で小学校だけ卒業させても就職できないのでは」との意見もある。ただ、小学校すら卒業していない子は劣等感を感じてしまう。すべての子どもに小学校だけでも卒業してもらい、自信を持って生きられるように、ということを目指している。
支援している子供の中に、日本のサポーターに「クリスマスプレゼントをちょうだい」といった、遠慮のない手紙を書いてくる子もいる。そんな時、自分の子供だったらどうしつけをするか考え、接し方を決めている。
事業はそれなりにうまくいっていても、経営は火の車。事業費や管理費を集めなければ活動は続かないため、事務局長としてプレッシャーを感じながら活動している。働きすぎて体調を崩したこともあるので、最近はできることとできないことを区別して優先順位を付けて取り組んでいる。
参加者からの感想・質問抜粋
・小学校建設資金はどのように集めたのか?
当初は、大口で寄付してくれる支援者がいた。現在は、学生ボランティアがチャリティフットサル大会などを行って資金を集めたり、助成金に申請もしている。
・小学校しか卒業していない子供たちはどのような仕事があるのか?
農村では、農家や漁師、都市ではゴミ拾い、乗り合いバスのドライバーなど
・フィリピンの社会保障制度は?
年金、健康保険など制度はあるが、保険金を支払えずサービスを受けられない人が多い。統計上では、25%の人が貧困状態にある。
・アクセスではどのように広報を行っているのか?
団体のリーフレット、個別のチラシなどをその都度作成している。HP, facebookなどでの発信も力を入れている。デザインが必要なものは、ほとんど自分(野田)で作っている。そのため、かなり忙しくなってしまっているが。(笑)
・NPOとしての資金源は?
スタディツアーが25%、フェアトレードが4%、会費22%、寄付27%、助成金14%など、さまざまな方法で満遍なく資金を集めるようにしている。
・NGOで働くことに興味があるが。
NPO/NGOで働く人は、「被雇用者」として指示を待つのではなく、「問題だと思うことを、自分たちの手で解決していくんだ」という
ような主体性のあるマインドを持つことが大切。
以上
NPO法人フェア・プラス
ツキイチカフェ担当スタッフ