NPO法人フェアプラス 事務局長Blog

上世屋集落の藤織り

  • 2019年09月21日

9月上旬京都府北部の山村上世屋集落を訪問し、村に古くから伝承されてきている藤織りについて調査してきました。

 

1.上世屋の歴史

上世屋集落は明治468軒の家があるすり鉢の底にある集落でした。周辺の田畑を耕し、家の屋根は村の人たちが協力してクマザサを拭いて作られていました。昭和19年の大火災で一度はほとんどの家が消失し、昭和38年の5メートルを超す豪雪により、多くの住民が離村してしまいました。

現在10世帯の人たちが暮らしていますが、多くは他の地域から移住してきた若い人たちで上世屋の復活に取り組んでいます。


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1.藤織りの歴史

上世屋の土地は綿花栽培に適さなかったため、周囲の山に群生していた藤の蔓を使い織物を作るようになりました。加えて、村の若い女性は、周囲の町へちり緬奉公に出て、機織りの技術を身に着けて村へ戻ってきていました。藤織りに適した土地だったと言えます。昔から春から秋にかけては農作業をするが、春藤の蔓を切り出し、雪深い冬にみんなで協力して灰汁炊きから始め藤織りを行ってきていました。

一時織物問屋がお茶席用に藤織りの座布団を作り、高値で藤織りの反物を購入したため藤織りが盛んになった時期があったが、その後衰退し、数名のおばあさんが藤織りを続け、伝統を守ってきました。

その後、35年前に藤織り講習会が始められ、当初はおばあさんの作業を横で見ることから藤織りを学び、伝統が受け継がれてきました。


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1.藤織りの製作工程

a. 藤織りは春の藤の蔓の切り出しから、灰汁炊き、冷たい川の水であらい、糸を紡ぎ、機織りまで非常に手間のかかる多くの工程を経て作られています。

① フジキリ(藤伐り)

森から藤の木を伐り出してくる。

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② フジヘギ(藤剥ぎ)

藤の木を木槌で叩いて表皮を剥ぎ、繊維に用いる中皮を採り出す。


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③ アクダキ(灰汁炊き)

中皮を水に浸し柔らかくし、木灰汁で炊く。

④ フジコキ(藤こき)

炊きあがった中皮を皮で洗い、コウバシというV字型の金属で扱いて不純物を取り除く。繊維部分のみが残る。


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⑤ ノシイレ(のし入れ)

米ぬかを溶かした湯に、藤の繊維を浸し、滑らかにする。繊維がトリートメント効果によりさばきやすくなる。

⑥ フジウミ(藤績み)

結び目を作ることなく、繊維を撚り合わせて績いでいく。(綿花から繊維を引き出していくことを‘’紡ぐ‘’と書くが、藤などの繊維に撚りをかけていくことを“績み”と書く。ここから紡績という言葉が生まれました。)


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⑦ ヨリカケ(撚り掛け)

績まれた糸を湯に浸して柔らかくし、糸車で全体に撚りを掛けていく。


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⑧ ワクドリ(枠取り)

撚られて糸車に巻かれた糸を木枠に巻き取る。


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⑨ ヘバタ(整経)

まかれた糸枠12個をもちいて整経台によって縦糸を決められた本数に整える。

⑩ ハタニオワセル(機上げ)

荒筬を用いてタテ糸を巻いた後、綜絖と筬へ通し、織り付け布に結ぶ。


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⑪ ハタオリ(機織り)

機織り機で織り上げ、反物が完成する。


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4.藤織りの作業を体験

今回特別に藤織りの一部の作業を体験させて頂きました。藤の繊維を米ぬかに浸し、乾燥させた繊維をコウバシというV字型の道具で扱いて米ぬかを落とし滑らかにする作業、


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フジウミという繊維を結び目を作ることなく撚り合わせて績いでいく作業、


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ヨリカケという績まれた糸を糸車で全体に撚りを掛けていく作業などを体験させて頂きました。


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作業は見た目以上に非常に難しく、うまく結び目を作れず何度もやり直すことになってしまいました。ひとつひとつの作業が、時間をかけて習得していく必要があり、作業を行う時には神経を集中することが求められますが、作業を体験させて頂くことにより、繊維の肌さわりを感じられ、繊維が次第に滑らかになっていくことを実感できました。藤織りを知るよい経験になりました。


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以上

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11月17日開催第49回ツキイチカフェ「当たり前」や「普通」を疑うこと、そして時間がかかっても、プロセスを大事にすること~社会の仕組みを変える「共育の場づくり」~

  • 2019年09月16日

49回ツキイチカフェ

テーマ:「当たり前」や「普通」を疑うこと、そして時間がかかっても、プロセスを大事にすること。

~社会の仕組みを変える「共育の場づくり」~

 

私たちは様々な人、社会、自然、そして地球とのつながりの中で豊かな暮らしを送ることができます。でも、日々の暮らしの中では、その関係性やつながりが見えないことも多く、気づかないうちに関わり方やつながり方を間違えてしまい、環境問題をはじめ、様々な社会問題を引き起こしています。目を背けがちな問題で、そして解決のためには多くの人々が関わり、考え、共に進むべき道を探し出すことが必要だと考えています。

Earth-PALは、その関わり方・つながり方を問い直し、すべての人にとって、そして地球にとってより豊かな関係性を築くためのきっかけとなる「学びの場」をデザインすることで、自分ごととしてより持続的な社会を創る仲間を増やすことを目指し、活動を始めました。〔新堀 春輔

フェアトレード・コーヒーを飲みながら、ゲストのお話をお聞きして、みんなで会話を楽しみましょう。どうぞ気軽にご参加下さい。


49回活動写真

ゲスト:新堀 春輔地球・環境共育事務所 Earth-PAL 代表)

高校時代に南アフリカ共和国に留学し、アパルトヘイトの名残やHIV、スラムなど、社会の構造により生み出される格差を目の当たりにし、国際的なソーシャルワーカーを志す。大学では社会福祉を専攻、在学中にEarth-PALを設立、直接的な支援だけではない、社会の仕組みを変える取り組みとしての「共育の場づくり」を始める。


49回ゲスト写真

 

日時:1117日(日)14001600

会場: 東山いきいき市民活動センター1階 和室

605-0018 京都市東山区巽町442-9

定 員:20

参加費: 社会人800円、学生・会員500

    (フェアトレード・コーヒー、アバカ手編みコースター(初回参加者)、ブランドカードセット代を含む)

主催:NPO法人フェア・プラス、共催:東山いきいき市民活動センター

申込:NPO法人フェア・プラス

Tel075-744-0646FAX075-744-0945

Mail:  info@fairplus.org 

 

NPO法人フェア・プラス

600-8492 京都市下京区月鉾町52 イヌイ四条ビル3階Flag四条

Tel: 075-744-0646Fax: 075-744-0945

Mail:  info@fairplus.org 

 

次回以降の予定

128日(日) ゲスト:守部 吾妻(NPO法人エッセンス 副理事長)

119日(日) プレゼンター:河西 実、学生スタッフ(NPO法人フェア・プラス)

以上

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9月8日開催第47回ツキイチカフェ「『やらねばならぬ!』を面白がる」

  • 2019年09月14日

98日開催第47回ツキイチカフェは、中山博喜さん(元ペシャワール会 現地スタッフ)をゲストにお迎えして、「『やらねばならぬ!』を面白がる」をテーマに開催しました。

第47回ツキイチゲスト写真

現在大学教員をされている中山さんは、授業で学生たちに「なぜ戦争は起きるのか?」と質問された話をされました。学生たちは、「戦争は絶対にやってはいけない」と口を揃えて答えるが、では現在シリアで行われている空爆により多くの市民の命が失われていることをどう思うかと質問すると、ほとんどの学生がそのことを知りません、関心を持っていませんでした。

「正義の力」を行使するという名目で多くの戦争が始まっています。2011911日、旅客機がニューヨークの高層ビルに突入するというテロから、「正義の戦い」としてアフガニスタン戦争が始まりました。しかし、米軍の空爆のため、多くのアフガニスタンの民間人が亡くなりました。


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その時、中山さんはアフガニスタンで活動されていました。

中山さんが現地で活動したペシャワール会は、パキスタンのペシャワールという土地で医療活動を行った中村哲さんという医師が立ち上げた国際支援NGOです。医療活動は国境を越えたアフガニスタンのジャララバードでも取り組まれていました。

2000年当時、アフガニスタンは大干ばつに見舞われ飲み水も得られない深刻な状況になっていました。中村医師は、「病気治療より水の確保だ」と、各村で井戸を掘る活動に取る組み1000本以上の井戸を掘りました。
しかも、掘った井戸を地元の人たちが作り、維持しているようにと、日本人が地元の人たちと一緒になって手掘りで、時には何トンもある地中の巨石を取り除き、掘っていきました。水が出るまでとにかく掘る、時には
120メートルの深さまで堀ったそうです。
中山さんがいらした当時、日本人
3名が各地の村へ井戸掘りに行き、一週間に一度事務所へ戻ってくるという活動をされていたそうです。

 

2001年アフガニスタン戦争が始まると、空爆と干ばつによりアフガニスタンは餓死に見舞われる食糧危機となり、ペシャワール会ではパキスタンから国境を越えて緊急食糧援助を行い、27万人に食料を届けました。

多くの井戸を掘りましたが、アフガニスタン全土では点にしか過ぎないことから、ペシャワール会では、干ばつで砂漠化した土地に14kmにもおよぶ長い用水路を、手掘りで作って行きました。芸大出の中山さんを初め、スタッフはみんな運河の工事経験などまったくなく、とにかく勉強する。
しかも、後にアフガニスタンの地元の人たちが維持していけるよう、先進国の技術に頼らず、戦国時代の信玄堤や江戸時代に行われた治水事業から学び、工事を設計し、取り組んでいったそうです。


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日本で募金活動をして集めた資金で、アフガニスタンの人たちを雇用し、用水路が完成するまでに働いてもらいました。しかも、日本人が一緒に掘ることにより、地元の人たちのモチベーションが高まったそうです。

現在、途上国で中国が資金提供し、中国の技術と中国の労働者の手により大規模工事を行っていますが、地元の人たちの雇用がないため、不満の声が上がっていると聞きます。

 

遥か遠くの砂漠を掘り始めた時、「だれもが想像すらできなかった」。中山さんたちペシャワール会のメンバーは、「やらなければならないことを結果がでるまでやりぬく」。そて、結果が出た時、「面白さと喜び」が生まれてきたそうです。用水路が完成して砂漠の大地に水がながれてきた時の様子を、ビデオで見せて頂きましたが、参加者にもその感動が伝わってきました。

その後、用水路の水が砂漠を3,000ヘクタールの緑の土地に変え、10万人の人たちが暮らせるようになったそうです。砂漠が緑の大地に変わった2枚の写真を見せて頂いた時、参加者から「凄い!」という声が漏れました。


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その後参加者の質問に答えて頂きましたが、どんな人がスタッフに向いていますかとの質問に、「情熱的な人ほど現地で活動を始めた時に、ギャップが出てくる、楽観的な人ほどよい」とコメントされました。

中山さんがペシャワール会に応募された動機が、先輩から「奴隷のように働く人間を求めている」と言われ、パキスタン、アフガニスタンのことをまったく知らないまま、「面白そう」なので応募したことを話され、参加者の笑いを誘って、ツキイチカフェは終わりました。

 

以上

 

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台中市国立繊維工芸博物館より特別展「Slow Life」のアルバムが届きました

  • 2019年09月07日

518日より台中市国立繊維工芸博物館で開催されている特別展「Slow Fashion」(アジア・パシフィックの天然繊維を使った身に着ける工芸品展)に、フェア・プラスは博物館から招待を受けてアバカ製品を出展しています。

先日、博物館で特別展を記念して制作された2種類のアルバムが届きました。


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どちらのアルバムも、フェア・プラスの取り組みやマリナオ村での暮らしとアバカ商品作りなどについて詳しく書かれています。

また、出展しているすべてのアバカ商品の写真が大きく掲載されています。


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博物館がフェア・プラスとマリナオ村の取り組みを高く評価して下さっていることに改めて心から感謝しています。


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なお、特別展は本年113日まで開催されていますので、台湾を訪問される機会がある方は、以下のサイトを参考にぜひお出で下さい。

 

Taichung Museum of Fiber Arts: 

http://mofia.gov.tw/  


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以上

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