2019年最初の1月12日開催第40回ツキイチカフェは、河西実(NPO法人フェア・プラス事務局長)が、「国境を越えた伝統技法とデザインの出会いが生み出す新たなエシカル(倫理的な)商品」をテーマにお話させて頂きました。
あまり馴染みがない『エシカル(倫理的な)』という言葉ですが、「人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動」、「私たちが食べたり、着たり、使ったりしている製品は全て、誰かがどこかで作っている。その背後には劣悪な環境で長時間働く生産者や、教育を受けられず強制的に働かされている子どもたち、美しい自然やそこに住む動植物が犠牲になっているかもしれない。」「『エシカル』な消費とは、そういったことがないような製品を購入すること」と言われています。
その一つが「フェアトレード」で、フェアトレードも「公正な取引」以外にいろいろな意味があります。フェア・プラスが設立以来取り組んできたマリナオへのフェアトレードを通じた支援とは何か、改めて今回振り返ってみました。
① 公正な取引:フェアトレードの基本で、フェア・プラスもマリナオ村で生産したアバカ製サンダルなどをイベント等で販売し、村への支援活動について日本の多くの人たちに伝える取り組みをおこなった。
② 自立支援、生産の質の向上:マリナオ村の人たちの収入向上、生活向上のため、デザイナーの協力を得て、付加価値の高いアバカ商品の開発に取り組み、百貨店での販売を行ってきました。さらに、着物の京都一加と名古屋帯などの商品開発を実現して村の人たちの生活の安定に寄与した。
③ 伝統の保護:村に伝承されるマクラメ編みの技法を守り、村内外の多くの人たちに広めていくため、マクラメ編みのトレーニングを実施するともに、共同作業場の建設、備品の提供などをおこなった。
④ 環境の保護:マクラメ編みの材料であるアバカの繊維の自給自足を実現するため、アバカの植林を行うとともに、フィリピン政府の専門家を招いて環境教育セミナーを実施した。
フェア・プラスでは、エシカルの理念をさらに広め、衰退する伝統工芸を守っていくためには、積極的に付加価値の高い商品を開発し、多くの人たちにその価値を伝えていく。そのためには、国を越えた伝統文化・工芸の出会いと、現代のアート・デザインとの融合に取り組んでいくことが重要と考えています。
2017-2018年、フィリピンの伝統技法「アバカ・マクラメ編み」と京都の着物文化との融合を、デザイナーの方のご協力により実現しました。アバカ製名古屋帯や巾着、信玄袋などの商品開発を行うことができました。
2018年には京丹後上世屋地区の藤織り、福島県奥会津地方の編み組細工の訪問調査を行い、日本の農村文化の中で育まれた伝統工芸とフィリピンの伝統工芸アバカ・マクラメ編みとの間に多くの共通点があることが分かりました。
それは、自然との共生し、自然の恵みを生かしてきていること、日本での雪国やフィリピンの交通不便な地域で暮らす人たちの辛抱強い努力により育まれたものであること、自然と共生した暮らしが途絶えるに従って、伝統工芸も衰退してきていること、などがあげられます。
2019年フェア・プラスでは、フィリピンの伝統工芸アバカ・マクラメ編みと日本の伝統工芸「藤織り」や京都の伝統工芸などとの新たな出会いを、デザイナーの協力により実現していきたいとの考えをお話ししました。
参加者のみなさんからも、国際協力と日本の山村の暮らしを結びつけること、地域の人たちの暮らしに寄り添い伝統を守っていくことどの素晴らしさについて発言があり、フェア・プラスの取り組みに共感して下さいました。
以上