11月19日開催の第28回ツキイチカフェは、石崎 雄一郎さん(ウータン・森と生活を考える会 事務局長)をゲストに迎えて、「ボルネオ島の熱帯林破壊と私たちの消費生活の関係」をテーマに開催しました。
日本から航空機で6時間の距離のある「ボルネオ島」のことはあまり知られていません。日本の国土の2倍の面積を有し、インドネシア、マレーシア、ブルネイの3か国にまたがっている。“かつては”国土の95%が熱帯林だったそうです。地球の7%の面積の熱帯林には地球上の全生物種の50%以上の多種多様な生物が暮らしている。この熱帯林の破壊により一部の生物が死滅すると生命の連鎖が断ち切られると、他の生物たちも死の危機に瀕してしまいます。
石崎さんは中学生の時、同世代の若者が地球サミットで「大人はどう直したらいいか分からないものを壊さないでほしい!」と訴えたことに衝撃を受けました。その後、大学時代前半は途上国でのNGO活動で家を建てる取り組みを行い、後半はヨーロッパ一人旅を続けました。卒業後にインターバルの時期を経た後、「ウータン・森と生活を考える会」のスタディツアーに参加したそうです。
そこでパームオイルを採取するためのプランテーションにより何が起きているかを目の当たりにしました。熱帯林が伐採され、土壌汚染、水質汚染が進み、多様な生物の豊かな暮らしが破壊されている姿でした。その土地で暮らす人たちは、現金収入が得るため、アブラヤシの伐採という過酷な労働につき、その中には小さな子どもも少なからずいたそうです。
ボルネオ島でエルニーニョ現象により大規模火災が発生した際、焼失面積は四国の1.4倍にもなったそうです。その原因は自然現象だけでなく、パームヤシのプランテーションにより土地が乾燥し、時には熱帯林をなくすため人間が自ら火を放ったそうです。
ボルネオ島の熱帯林の土地は「泥炭湿地」という、有機物が完全に分解せず炭化し堆積した豊かな土地が多くあり、この「泥炭の地面が燃える」という話は衝撃的でした。熱帯林の破壊により住む土地を失いパームヤシのプランテーションに入り、殺されてしまうオラウータンも数多くいるそうです。
それでも現地の人たちは収入を得るためプランテーションで働いています。石崎さんたちは社会にパームオイルによる熱帯林破壊の問題を発信するとともに、現地のNGOとともに破壊された土地に木を植え、有機農業による現地の人たちの仕事作りに取り組んでいるそうです。「かつて熱帯林を破壊していた人間が木を植えている」と笑顔で話をする現地の人のインタビュー動画が印象的でした。
ここまで遠い国の出来事と感じていた参加者がショックを受けたことは、馴染みのないパームオイルが実は世界で一番消費されている油であるという事実です。サラダ油のように私たちが直接油として使用することはありませんが、安価なためポテトチップ、カップ麺、アイスクリーム、チョコレート、菓子パン、歯磨き粉など多くの商品に使われており「見えない油」とよばれていることを知りました。私たちは、日々これらの商品を購入することにより、熱帯林の破壊を容認し、現地の生物、そして現地の人々の暮らしを奪っています。
最後の参加者との意見交換では、「パームオイルを使った製品をできるだけ購入しない」などの意見がでましたが、それに加え「事実を知ること、隣人に知らせること」が大切ではと石崎さんよりコメントがありました。今回のツキイチカフェは、私たち自身の生活を振り返り、見直すきっかけになったのではないでしょうか。
NPO法人フェア・プラス
河西 実