8月20日開催の第14回ツキイチカフェは、浦田 雅夫さん(京都造形芸術大学こども芸術学科准教授、社会福祉士 臨床心理士)をゲストに迎えて、「社会的養護ってなんでっか?」をテーマに開催致しました。
浦田さんから、親が死去したり、虐待などの何らなの理由により親と一緒に暮らすことができなくなり、施設で暮らす子供たちの厳しい現実についてお話を伺いました。
施設で暮らす子供たちは、18歳になると「大人」として自立しなければなりません。十分な後のサポートが受けられず、一旦就職しても続けて働けなかったり、生活に困窮する人たちもいます。発達障害で社会とのコミュニケーションをとることが難しい人たちもいます。
その人たちの中には、お金も食べ物もなく、誰かに頼るすべもわからず、わずかリンゴ2個を盗むため強盗殺人を犯す人もいます。社会で暮らすすべがなく、寝る場所と食べ物が得られる刑務所に入るため窃盗を繰り返す人もいる、刑務所が唯一の安住の場所になっているケースもあることをお聞きしました。
社会へ出てからの厳しい現実を知った養護施設の子供たちは、「18歳になって施設から出るのが怖い」と、作文に書いてくる子供たちもいるそうです。
一方で、虐待の件数は平成27年には10万件を超えてきており、虐待を通報する24時間対応の電話「189」も整備されてきましたが、この電話に対応する専門職の人たちは一般の行政職員で体制、人員があまりにも不足して電話を受けている職員の人たちが疲弊してきていること。また、「通報型社会」は、子供の泣き声が聞こえるとすぐに虐待通報をされることから、普通に暮らす親子が通報を避けるためシャッターを下ろしてひっそりと暮らすという、社会との隔離を生み出すという現実もあることを知りました。
参加者からは、「あまりにもやるせない」、「もっとケアする人たちの充実が必要では」、「私たち社会の人間が他人事としてみてしまっている」、「もっと多くの人たちに現実を知ってもらいたい」、「メディアも他人事でない取り上げ方をすべき」など、多くの発言がされました。
また、福祉関係職の参加者からは、「施設を出る子供たちに、困ったときに困ったと言っていいことを知ってもらう、誰に相談したらいいか伝えていくこに、日々悩んでいる」などの感想が述べられました。
浦田さんは、今年4月から施設を出て厳しい状況にある子供たちの受け皿となれよう「サロンド・ツキイチ」という活動を立ち上げたそうです。
今回、私たちもこの厳しい現実を「他人事」ですましてはいけないことを認識する、キイチカフェになったと思います。
NPO法人フェア・プラス
事務局長 河西 実