2015年9月5日(土)第3回ツキイチカフェをセレクトシップ和望店主 吐山信子さん(フリーライター)をゲストに迎えて、「フェア・プラスの想いを伝える」をテーマにお話をお聞きしました。
以下、カフェでのお話を纏めましたのでご覧下さい。フェアトレードを志す人たちにとって非常に貴重なお話をお聞きすることができました。
なお、3:30-15:50のツキイチカフェ終了後にオプションツアーで和望さんを訪問・見学し、引き続きお話を伺い、解散した時は、18時を回っておりました。
ボランティア、NGO/NPOとの出会い
約30年前、出版編集プロダクションを経営する友人に求められるままにライターになった。その友人が大阪ボランティア協会の研修に参加し、企業の文化活動やゴミ拾いといった社会貢献だけでなく、「本業を活かした社会貢献」という提案に感動して帰り、企業の社会貢献をテーマにした国内初の雑誌を発行することになった。振り返ると、そうした経験の中で、「本業を活かした社会活動をするのは自然なこと」と思うようになった。
フェアトレードとの出会い
妹の友人にアジアを旅するのが好きなご夫妻がいた。タイの田舎のゆったりと時が流れる暮らしに感動する一方で、そこにある貧しさにも触れた。折から世界各地で貧困からの売春などが問題となっていた。ご夫妻は繰り返し訪れて親しくなったタイ、チェンマイの女性たちの助けになればと、自宅の一部をお店にして彼女たちの手織り製品、手工芸品の販売を始められた。約30年前のこと。フェアトレードと言われていなかったが、まさにフェアトレードだと思っていた。現在ご夫妻はタイはもとよりラオス、ミャンマーなどにも活動の場を広げておられる。
観光地とフェアトレード
2013年秋、京都で店をやらないかという話が舞い込む。ガラスシェード会社経営の友人の協力を得て、大阪・天満切子のベテラン職人さんの製品などが扱えることに。旧知の間柄の河西さんのフェアトレード製品のコーナーも設けたいと。京都・清水寺の近くに2014年4月、和望(WABOU)をオープン。観光地の特徴通り一見さんが多いので固定客をつくりにくいというデメリットが、考え方次第で品揃えを頻繁に変えなくても飽きられないというメリットと捉えている。従って案外、スピーディーな新製品開発が難しいフェアトレードの販売に向いている立地といえるかもしれない。
フェア・プラスの思いをどこまでお客様にお伝えできているか
オープン当初はできる限りパンフレットを渡し、フェアトレードについて説明していたが、詳しくやりすぎると引かれることも。だんだんお客様の興味の度合いを見て、自らチラシなどを手にした方には詳しく話したり、商品を気に入ってレジに持って来られた方には商品の背景をサラッと伝えようにしたり、ケースバイケースでやっている。フェアトレード以外の商品も同様で、お客様との距離感がやっとつかめてきた。
ライターと和望に共通するもの
取材も接客もコミュニケーションがポイント。「コミュニケーションは受け手が完成させる」と思っているので、自分本意に陥ることのないようにと心がけている。また、ライターになったのも和望を始めることになったもの、自らの意思でないところは、まさに行き当たりばったり。ずいぶんエエ加減な人生ですが、行き当たりばったりを笑って歓迎できる柔軟さをチャレンジ精神のなせる技かも(笑)
参加者からの感想・質問抜粋
・行き当たりばったりと言いながらも出会いやネットワークを大切にされているのが印象 的
・商品を仕入れる基準は?
和望の3人が気に行ったものを置いている。
フェアトレード製品に関わらず和望の店づくりに合った魅力を感じない商品は扱いたくない。
フェアトレードも作り手が、自分も買いたい、友人にプレゼントしたいと思えるものであるか、疑問符の付くものも見受けられる。義理で取り扱いを始めても長続きしないと思う。
フェアトレードも仕入れ条件が取り扱いの一つのポイント。
フェアトレードも一般商品と同様に、販売店に用途・目的や売り方などを提案してほしいし、それができる製品を提供してもらいたい。
フェアトレードの従事者は「伝える」こと、製品の由来を説明することがミッションだと言うが、それ以前により多くの方が使いたい、欲しいと思うものでなければ、一部のミッション理解者寄りの製品の域から脱しないだろうし、広がらないのでは。
フェアトレードも誰に買ってもらうのか、どんな場所で売りたいのか、「出口」を考えてつくるべき段階にあるのではないか。
フェアトレードと言わなくても訴求力のある商品が増え、また、それらがフェアトレード専門店以外の多様な店で販売できればいいのでは。商品化とともに販路の拡大も重要なのではないだろうか。
和望は、フェアトレードのみならずすべての商品の背景を大切に販売していきたいと思っている。